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決めない男が不幸を拡散する? シェイクスピア ハムレットのあらすじを解説


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「ソープへ行け!」というよくわからない名言で有名だったのは小説家の北方謙三ですが(古い話ですみません・・)、「尼寺へ行け」という、これもまたよくわからない名言で有名なのはシェイクスピアの戯曲「ハムレット」です。

 

このハムレットという男、”父親の敵(かたき)を取る”という明確な目的があるにも関わらず、やることがチグハグ。”狂人を装う”、”演劇会を開く”、”恋人の父親を誤って殺す”、”恋人を発狂させる”、”友人を死刑にする”・・・。ハムレットが復讐にもたつく間に、関係のない人が不幸に巻き込まれていきます。

 

ローレンス・オリビエが主演した映画「ハムレット」も「これは決断できない男の悲劇である」という、オリジナルにはない言葉で始まります。

 

決められない男ハムレットがどのように不幸を拡散していったのか、登場人物とあらすじを見ていきましょう。

 

主な登場人物

 

ハムレット:父親を殺し母を娶った王クローディアスに復讐を画策し、狂人になったふりをするが・・。

■亡霊:先の王でハムレットの父親。息子に自分の死の真相を告げる。

■クローディアス:現王でありハムレットの叔父。兄である先王を暗殺し王位につく。

■ガートルード:王妃でありハムレットの母。先王の死後、クローディアスと結婚する。

■オフィーリア:ハムレットの恋人。父親をハムレットに殺され正気を失う。

■ポローニアス:宰相。オフィーリアの父親。ハムレットに誤って殺されてしまう。

■レイアーティーズ:ポローニアスの息子。父親と妹の仇をうつためハムレットを殺そうとする。

■ホレイショー:ハムレットの友人。

■ローゼンクランツ、ギルデンスターン:ハムレットの友人だが、王の命令でハムレットの動向を探ろうとする。

■フォーティンブラス:ノルウェイの王子。

 

 

詳しいあらすじ ネタバレ注意!

 第一幕 化けて出てきたお父さん。息子ハムレットに面倒な宿題を出す

 所はデンマークのエルシノア城。この城に夜な夜な亡霊が現れるのを衛兵が目撃します。亡霊は2か月ほど前に毒蛇に噛まれて亡くなった先王に瓜二つ。先王の息子ハムレットは、さっそく友人のホレイショーらと亡霊の正体を突き止めようと城で待ちかまえます。

 

やがて甲冑に身を包んだ先王の亡霊が現れ、恐ろしい事実をハムレットに語りだします。「自分は昼寝をしているところを弟のクローディアス(現在の王、ハムレットの叔父)によって毒殺された。更にクローディアスは自分の妻ガートルードをたぶらかして娶ったのだ」と

 

亡霊は息子ハムレットに敵(かたき)を討つよう命じます。ハムレットは真実を知ってしまったがために復讐という重い宿命を背負うことになったのです。

この世の関節がはずれてしまったのだ。なんの因果か、それを直す役目を押し付けられるとは!(福田恒存訳 新潮文庫

  

一方ハムレットにはオフィーリアという恋人がいました。ところがオフィーリアの父親ポローニアスは、娘とハムレットの身分違いを危惧し、娘に「今後はハムレットと口をきいてはならぬ」と命じるのでした。

   

 第二幕 復讐するぞ!と勇んだものの、何故か発狂したふりをするハムレット

 

ハムレットはクローディアスへの復讐を果たすため、真意が悟られぬよう気が狂ったふりをします。クローディアスは甥の発狂の原因を探るため、ハムレットの友人ローゼンクランツとギルデンスターンに探りを入れさせますが、原因がわかりまん。

 

一方ポローニアスはハムレットが正気を失ったのは、自分の言いつけにより娘のオフィーリアがハムレットに冷たい態度を取ったためだと早合点します。ポローニアスは確証を得るため「オフィーリアとハムレットを鉢合わせさせて、陰で様子を見てみましょう!」とクローディアスに提案します。

 

 そんな折、旅芸人の一座が城にやってきます。ハムレットは一座に王殺しの劇を演じるよう命じます。それを鑑賞するクローディアスの様子を観察し、先王殺しの確証をつかもうと画策したのです。

 

 第三幕 「生きるべきか死ぬべきか?」ハムレットよ、おまえ自身が問題だ!

 

オフィーリアが本を読んでいると、そこにハムレットが現れます。「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」と有名なセリフをつぶやきながら。ハムレットは狂人を装いオフィーリアに悪態をつき、執拗に「尼寺に行け!」と繰り返します。オフィーリアは気高いハムレットがまるで別人にように変わってしまったことにショックを受けます。

 

ポローニアスとクローディアスは物陰に隠れて、その様子を盗み見していました。クローディアスはハムレットの発狂は失恋が原因ではなく、狂人を装い良からぬことを企んでいるのでは?と見抜きます。そして事が大事に至らぬ前に彼をイギリスに追いやろうと考えるのでした。

 

王の御前で旅芸人による劇が始まります。ところが劇は王が寝ている間に毒殺されるという内容。クローディアスはハムレットの悪意を知り激怒します。一方ハムレットはクローディアスの尋常ならざる様子を見て、先王殺しの犯罪を確信するにいたります。 

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観劇するハムレットとオフィーリア エドウィン・オースティン・アビーの作品

 

クローディアスは過去の自分の悪行を思い出し、神に一人祈ります。その様子を見かけたハムレットは今が復讐のチャンスと考えますが、神に祈りをささげている間に殺したのでは復讐にはならないと思案し、暗殺を思いとどまります。

 

母親ガートルードはハムレットの悪意あるふるまいに驚き、自分の居間に息子を呼び出します。ガートルードはハムレットの行いを諫めようとしますが、息子の暴力的な態度に身の危険を感じ、声をあげて人を呼びます。

 

その部屋の壁掛けにはポローニアスが隠れていました。ところがハムレットはクローディアスと勘違いし「おお!さては鼠か?くたばれ!」と言いながら、壁掛けごと剣で突き刺しポローニアスを殺してしまいます。

 

そこに先王の亡霊が現れ、ハムレットに復讐の催促をします。「忘れるなよ、ハムレット!その鈍った心を励ますためにここに来たのだ!」

 

 ハムレットはポローニアスの死体を引きずりながら、母の部屋を後にするのでした。

 

 

第四幕 オフィーリアは父親を殺され発狂 更に水死体で発見!

 ポローニアスの死を知ったクローディアスは身の危険を感じ、今夜中にハムレットを船に乗せイギリスに向かわせようとします。同行者はローゼンクランツとギルデンスターン。二人にはイギリス王への親書を持たせますが、そこには到着後ハムレットを殺してほしいとの依頼が書かれていました。

 

一方オフィーリアは父ポローニアスがハムレットに殺されたことを知り、精神錯乱状態となります。

 

ポローニアスの息子レイアーティーズは、ハムレットによって父親が殺されたことをクローディアスから聞かされ、また妹のオフィーリアが狂人となった姿を見てハムレットへの復讐を誓います。

 

そこにイギリスに渡航したはずのハムレットデンマークに帰国したとの知らせが入ります。ハムレットの船が海賊に襲われたため、これ幸いと戻ってきたのです。

 

ハムレットの帰国を知ったクローディアスとレイアーティーズはハムレットを殺すため共謀します。レイアーティーズに毒を塗った剣で試合をさせ、さらにハムレットに毒杯を与えようと考えたのです。

 

 その時ガートルードが現れ悲報を告げます。「オフィーリアが小川で溺れて死んだ」と。彼女は川辺に立つ柳の枝に花輪をかけようとし川に流されたのでした。妹の死を知ったレイアーティーズは、一層ハムレットへの怒りをつのらせるのでした。

 

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おそらく世界で最も有名な水死体 ジョン・エヴァレット・ミレイ<オフィーリア>

 

第五幕 全員死亡のクライマックス やけくそで王位もライバルにプレゼント?

 

 ハムレットがホレイショーと共に墓場にいると、棺桶を担いだ一行が現れます。ハムレットは隠れて様子を伺いますが、それがオフィーリアの葬式だと気づきます。ハムレットは期せずして姿を現しますが、その場にいたレイアーティーズと取っ組み合いのけんかとなるのでした。

 

城に戻ったハムレットはホレイショーにデンマークに帰国したいきさつを話します。実は船中でイギリス王への親書を盗み見し、クローディアスが自分を殺そうとしていることを知ったのでした。そこでハムレットは親書を書き換え、自分の代わりにローゼンクランツとギルデンスターンを死刑にするよう計らいます。その後船は海賊に襲われたためハムレットデンマークに一人帰国しましたが、ローゼンクランツとギルデンスターンはそのままイギリスに渡ったのでした。(親書の内容を知らないローゼンクランツとギルデンスターンは死刑になります・・・)

 

ハムレットはクローディアスの要請でレイアーティーズと剣試合をすることになります。試合の名目は賭け事の娯楽でしたが、実はハムレットの暗殺を目論んだものでした。

 

試合は一本目はハムレットが取ります。王は祝福し密かに毒をいれた杯をハムレットに渡そうとしますが、ハムレットは断ります。

 

二本目もハムレットが取ります。喜んだ母親のガートルードは杯に毒がもられたことを知らず、一人乾杯をしてしまいます。

  

三本目はレイアーティーズが油断したハムレットの背中を切り付けます。実はこの剣先には毒が塗られていました。二人は激しい取っ組み合いとなりますが、偶然にもお互いの剣が入れ替わり、クローディアスも傷を負います。

 

その時ガートルードが倒れ息絶えます。負傷したクローディアスは剣に毒を塗ったこと、杯に毒をもったこと、そしてその罪は王クローディアスにあることを告げ息絶えます。

 

全てを知ったハムレットはクローディアスを刺し、毒杯を飲ませて殺します。瀕死のハムレットは次期王をノルウェイの王子フォーティンブラスに託すようホレイショーに言い残して息絶えるのでした。 

 

感想・解説

賢いのかアホなのか?やることがチグハグなハムレット

  この戯曲で悪事を働いたのは先王を殺したクローディアスだけです。ですから事は単純なはず。さっさと王を殺せば良いのですから。でもハムレットが一人で事を複雑にしてしまうのです。

 

まず復讐するのに狂人を装う必然性はありません。かえって「俺は危ないやつだ」と余計なメッセージを送り警戒されてしまうのです。クローディアスはハムレットがオフィーリアに「尼寺に行け」と何度も繰り返す姿を見て「これは演技に違いない、何か企んでいるぞ」と勘繰りますし、演劇会がきっかけでハムレットの真意を見抜いてしまいます。「そりゃそうなるでしょ。」と突っ込みたくなりますが・・。

 

第三幕ではクローディアスが一人で神に祈りをささげているという絶好のチャンスが到来!でも「祈りの最中に殺したら復讐にならないな。そうだ!やっぱり悪事を働いている時を狙わなきゃ・・」と勝手な理由をつけて引き延ばし、挙句の果てに人違いをしてポローニアスを殺してしまいます。なにやってるんだい!

 

 しびれをきらした父親の亡霊からも「早く実行しろよ。でもお母さんを大切にな・・」と説教される始末。

 

そして衝撃のラストシーン。瀕死のハムレットはライバルだったノルウェイの王子フォーティンブラスをデンマーク国王に推挙・・って。えーっ?なんで???

 

目的と手段がチグハグで突っ込みどころ満載のハムレット。でもこうした人間の非合理的な側面が、この戯曲を魅力的な傑作にしています。合理的に行動したら悲劇になりませんからね。

  

端役ローゼンクランツとギルデンスターンは20世紀に救われる 

 割に合わない役がローゼンクランツとギルデンスターン。ハムレットの友人というだけで王からハムレットの様子を探るようスパイのような役目を仰せつかったり、イギリスに親書を持ってハムレットを連れていくよう命じられます。でも最後はハムレットが改ざんした偽親書のせいでイギリスで死刑!ハムレットも「まあ、自ら蒔いた種だからしょうがないでしょ」みたいなノリで同情心なし。なんだか虫けらのような扱いでかわいそうですね。

 

でもこの二人、20世紀になってようやく浮かべれる時がきます。イギリスの劇作家トム・ストッパードが「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」という戯曲を書いて1966年に上演したのです。端役から主役に大抜擢(笑)。その後1990年にはストッパードの監督で映画化され、ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞!なんとローゼンクランツをゲイリー・オールドマン、ギルデンスターンをティム・ロスが演じてるんです。豪華キャストですね。

 

更に2017年には日本でも生田斗真がローゼンクランツ役を、菅田将暉がギルデンスターン役を演じた舞台が上演されました。これで二人も成仏できた?

  

やっぱしシェイクスピアは舞台で見るべし?

  やっぱりシェイクスピアは舞台で楽しまなきゃ!と言っておきながらhirozonはまだ見たことがありません(涙)。という訳で藤原竜也×蜷川幸雄ハムレットの動画がありましたので貼っておきます。

 

藤原竜也 舞台 ハムレット 前半(壱) HAMLET(part1) - YouTube

  

それと2019年5月19日~6月2日まで渋谷bunkamuraシアターコクーンで舞台があります。ハムレットは 岡田将生、オフィーリアは黒木華。華ちゃんがかわいいので宣伝してあげます。

https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/19_hamlet/

 

ハムレットは何度も映画化されているのだ

舞台が見れない人は映画を見ましょう!本を読んでいるだけでは分かりにくい登場人物のテンションが理解できます。「めちゃめちゃ怒ってる!怖っ!」みたいな(笑)

 

・1948年のローレンス・オリヴィエ主演

・1990年のメル・ギブソン主演

・1996年のケネス・ブラナー主演

 

どれか一つを選ぶとすればケネス・ブラナー版。時代が19世紀に変更になっていますが、セリフを忠実に再現しているので戯曲から入った人には面白いかと。ただし字幕を追うのは大変です。しかも4時間・・・。 

ハムレット(字幕版)

ハムレット(字幕版)

  • Kenneth Branagh
  • ドラマ
  • ¥1500

 

ハムレット(字幕版)

ハムレット(字幕版)

 

  

さて「読むべきか読まざるべきか?」ハムレットのように悩むくらいならさっさと読むべし!新潮文庫は460円。500円玉一枚で楽しめます! 

 

ちなみに「ハムレット」はシェイクスピアの四大悲劇の一つ。

他の悲劇はこちらの解説をご覧ください。 ではまた。www.hirozon.com www.hirozon.com

  

ハムレット (新潮文庫)

ハムレット (新潮文庫)