世界の小説 名作探訪

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ヒースクリフの復讐  エミリー・ブロンテ「嵐が丘」のあらすじを解説2

 

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作者エミリー・ブロンテ この絵、怖い・・・

エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」の続きです。

前回までの話はこちら!

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あらすじに入る前に作者のエミリー・ブロンテについて簡単にご紹介。エミリーが残した長編小説は、この「嵐が丘」のみ。というのも彼女は30歳の若さで亡くなっているんです。残念!もっとたくさん作品を読んでみたかった。

 

彼女にはこうした小説を書くだけの個人的な経験や資料はありませんでした。現代と違ってワイドショーや週刊誌があるわけではありませんから。ほとんど自分の想像力だけを頼りに、この犯罪的な世界感を作り上げていったんですね。ものすごい想像力!

 

作品が発表されたのは1847年。「エリス・ベル」というペンネームを使って出版されました。当時は女性作家に対する評価が低かったため、男とも女ともとれる名前を使ったのです。

 

ところが出版当時の評価はさんざんなものでした。語り部が途中で変わったり、伝聞の中にさらに伝聞が入る複雑な構成が、当時の人には受け入れられなかったのです。

 

嵐が丘」が評価されるようになったのはエミリーの死後のことです。サマセット・モームは1954年に書いたエッセイ「世界の十大小説」の一つに「嵐が丘」をピックアップしていますし、エドマンド・ブランデンが英文学の三大悲劇と評しています。(ちなみに他の二つはシェイクスピアの「リア王」とメルヴィルの「白鯨」)。

 

(「リア王」のあらすじはこちらをご覧ください)

昔のイギリスにも存在した沢尻エリカ シェイクスピア リア王 - 世界の小説 名作探訪

 

今までに映画・ドラマ化も数多くされています。有名なのは1939年にウイリアム・ワイラーが監督し、ローレンス・オリヴィエヒースクリフを演じた映画ですかね。内容はずいぶん小説とは違いますが・・・。

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 そういえば80年代にフジテレビで渡辺裕之田中美佐子主演の「愛の嵐」ってあったなぁ。あれも「嵐が丘」をもとにしたドラマでした。蛇足ながらこの時間帯は「愛 無情」というドラマもあって、こちらはヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル(ああ無情)」のリメーク。両方とも夢中になって見た記憶があります。

 

エミリー・ブロンテは姉妹もすごい小説家なのです。お姉さんのシャーロット・ブロンテは「ジェーン・エア」を1847年に出版し、こちらは好評を博しました。妹のアン・ブロンテは1848年に「ワイルドフェル・ホールの住人」を出版しています。「ブロンテ姉妹」という映画もあるんですよ。エミリーをイザベル・アジャーニが演じています。 

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それでは小説「嵐が丘」のあらすじを、前回に引き続き見ていきましょう。

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嵐が丘」のあらすじを解説

第十章 お金持ちになって帰ってきたヒースクリフ

鶫の辻でキャサリンエドガーの穏やかな結婚生活が三年続きますが、そんな日常をぶち破るかのように、あのヒースクリフが戻ってきます。彼はどういうわけか大金を手にし、かつての自堕落ぶりはみじんも感じさせない紳士となっていました。

 

キャサリンは久しぶりの再会に大喜びしますが、その様子を見たエドガーは面白くありません。更に彼を困惑させたのは妹イザベラが、こともあろうにヒースクリフに恋心を抱くようになってしまったのです。リントン家のエドガー、イザベル兄妹は二人そろって異性を見る目がありませんね・・・。

 

キャサリンはイザベルに、ヒースクリフがいかに粗野な男で彼女にふさわしくないかを説きますが、その結果二人は口論になる始末。

 

一方ヒースクリフはイザベラに関心がないと、最初は冷たくあしらうのですが・・・。

 

第十一章 ヒースクリフがイザベルをたぶらかす 彼の本当の狙いは? 

 ヒースクリフはイザベラに言い寄り、たぶらかそうとします。 彼は自分を捨てエドガーとの結婚を選んだキャサリンに復讐するため義妹のイザベラに近づいたのでした。

 

ヒースクリフはキャサリンにこう告げ、口論となります。

お前は俺にひどいことをしてきた。ひどい仕打ちをな!それは俺も重々承知していることを肝に銘じておいてもらいたい。(中略)俺が仕返しもせず引き下がっていると思うなら、その逆だってことを思い知らせてやる!新潮文庫 鴻巣友希子訳 以下引用はすべて同じ)

 

家政婦のネリーは二人の口論を鎮めるため、エドガーにことの次第を告げに行きます。 ところがキャサリンエドガーに話を立ち聞きされたと勘違いし、今度はエドガーと口論になってしまいます。ヒースクリフと喧嘩したり、エドガーと喧嘩したり忙しいご令嬢です。

 

腹を立てたエドガーはキャサリンに今後ヒースクリフと会うのをやめるか、自分と別れるか二者択一を迫り、ヒースクリフには金輪際家に出入りすることを禁じてしまいます。

 

それがもとでキャサリンは烈火のごとく怒り狂い、寝室に閉じこもってしまうのでした。

 

第十二章 イザベラはヒースクリフと駆け落ち

部屋に閉じこもったキャサリンは三日間食事もとらず、次第に精神も病んでいきます。ネリーは医者のケリーを呼びに行きますが、彼からよからぬ噂を聞きます。ヒースクリフがイザベラに駆け落ちをしようと口説いていたというのです。

 

翌日その噂が本当だったことがわかります。イザベラは昨夜鶫の辻を出て、ヒースクリフと共に行方をくらませてしまったのです。

 

第十三章 イザベラの後悔 ヒースクリフの本性にようやく気付くが後の祭り

イザベラが駆け落ちしてから2か月がたちましたが、依然として二人の消息は不明でした。その間キャサリンは病気を克服し、うれしいことに後継ぎを身ごもっていたことがわかります。

 

そんな時、イザベラからネリーに手紙が届きます。そこには彼女の後悔の気持ちが綴られていました。イザベラはヒースクリフと共に嵐が丘の家で暮らしていましたが、彼は全く彼女を愛しておらず、最初から騙すつもりでいたことに気づいたのです。

心のそこからあの人が憎くて、みじめでならないわ。本当に私がばかだった!けど、このことはひと言も鶫の辻には漏らさないようにね。毎日、あなたが来るのをいまかいまかと待っています。ーーーどうか期待を裏切らないで!

 

第十四章 家政婦ネリーおばさん、イザベルに会うため嵐が丘を訪れるも、ヒースクリフと余計な約束をしてしまう

 ネリーは嵐が丘を訪れますが、そこで見たのは自堕落な空気に毒された哀れなイザベルの姿でした。彼女は精神的にヒースクリフから虐待を受けていたのです。

 

ヒースクリフはネリーを見つけるとキャサリンに会わせるよう、しつこく迫ります。ネリーは断り続けますが、とうとう根負けしヒースクリフとキャサリンを引き合わせることを約束させられてしまいます。

 

ネリーのやることは全て裏目にでます・・。

 

 第十五章 ヒースクリフとキャサリンの悲しい再会

 

それから4日後の日曜日、エドガーたちが教会に出かけるため留守にした隙に、ヒースクリフがキャサリンの部屋に現れます。彼はキャサリンの変わり果てた姿を見て、もはや全快の見込みがなく、死を待つしかない運命であると悟ります。

ああ、キャシー!俺の命!こんなこと、どうして耐えられるだろう!

 

キャサリンは彼女らしい意地悪な言葉で返します。

あなたがどんなつらい目にあおうと知ったことじゃない。あなたの苦しみなんてどうでもいいのよ。<中略>いまから二十年後にはこんな風に云うんでしょうね、”あれがキャサリン・アーンショウの墓だ。遠いむかしには彼女を愛し、亡くなったときは涙に暮れもした。だが、もう過去のことだ。あれからたくさんの女を愛してきた。いまでは子どもたちのほうが、彼女よりも愛おしい。”

  

二人の逢瀬が続く中、教会のミサが終わりエドガーが帰宅します。ヒースクリフは立ち去ろうとしますが、キャサリンは彼を離しません。

ねえ、お願いよ、行かないで。これっきりになるというのに!エドガーだってわたしたちに手出しはしないわ。ヒースクリフ、わたし死んでやる、死んでやるから!

二人は抱きあいます。

 

ネリーはエドガーに見つかるのではないかと気が気でなりません。二人を引き離そうとわめき散らしますが、その騒ぎを聞きつけエドガーがやってきます。(ネリー!また余計なことを・・・。)

 

すでにキャサリンヒースクリフの腕の中で気を失っています。その光景を見たエドガーはヒースクリフに飛びかかりますが、ヒースクリフはこう言ってかわします。

よく見ろ。おまえが鬼ではなく人間なら、まず彼女を看病するんだな ーーー 俺に文句を云うのはそれからだ!

 

エドガーとネリーはキャサリンをなんとか正気づかせますが、誰の顔もわからないという有様です。

 

疫病神のヒースクリフはネリーに促され、ようやく家を出て行きました。

 

第十六章 キャサリンの死と二代目キャサリンの誕生 

 その晩キャサリンは子供を産んで亡くなります。その子供は母親と同じ名前キャサリンと名付けられました。彼女がロックウッドが最初に嵐が丘で出会った少女です。(ここでは母親キャサリンと区別するためキャシーと呼びます)

 

翌朝ネリーはヒースクリフに会い、キャサリンの最後の様子を告げます。

 

キャサリンはリントン家の墓ではなく、緑の丘の斜面に埋葬されたのでした。

 

第十七章 イザベラは逃亡先でヒースクリフの子供を出産 嵐が丘の屋敷はヒースクリフの手に渡る!?

葬儀の翌日、悲しみに沈む鶫の辻のリントン家に、イザベラが息を切らして大声で入っきました。彼女は怪我をして血を流していました。ヒースクリフが彼女に暴力をふるったったため、命からがら逃げてきたのです。

 

イザベラはヒースクリフにつかまるのを恐れ、ロンドン方面まで逃げのびますが、そこでヒースクリフの子供を産み、リントンと名付けます。(ヒースクリフが憎むリントン家の名前を息子につけたのが、彼女のせめてもの抵抗だったのでしょう)

 

嵐が丘の家ではキャサリンの兄だったヒンドリーが亡くなります。彼は賭博の金をつくるため自分の土地をかたに入れていました。その抵当権を持っていたヒースクリフはヒンドリーの土地をまるごと手に入れてしまったのです。

 

ヒースクリフは本来この屋敷の主となるはずだったヒンドリーの息子ヘアトンを、召使のようにこき使います。教養なく育てられたヘアトンは自分が不当な扱いを受けていることすら知らず、ヒースクリフの支配のもと、この家でし暮らしていくしかないのです。

 

ヒースクリフの復讐は留まることをしりません。かつて自分を虐待したヒンドリーと、自分を捨てたキャサリンの兄妹が死んでも、復讐の対象は彼らの子供たちに引き継がれていくのです。ヒースクリフめ!陰険でしつこいぞ!

 

 今日はここまでにしておきます。続きはまた。